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山川出版社から発売されている
「越える文化、交錯する境界」のご紹介です



定価(本体1800円+税)
 「越える文化、交錯する境界」
 〜トランス・アジアを翔るメディア文化〜

編 者:岩渕功一
出版社:山川出版社
出版年:2004年
 (ISBN4-634-47430-1)

 知って考えよう
 アジアのこと

 テレビ・映画・音楽・マンガが
 想像=創造する越境の(不)可能性

国際交流基金アジアセンター企画
「アジア理解講座」より



 2004年3月に発刊されたこの本は、早稲田大学の岩渕功一先生が編集した書籍です。本の内容は、国際交流基金アジアセンターが企画した「アジア理解講座:アジアを交錯するメディア文化(2003年度第一期)」の講座内容を編纂したものです。

 日吉は、同基金の講座で「ベトナム系住民のディアスポリック・メディア消費」と題した講座を担当しました。本書では、第八章の「ベトナム系住民のディアスポリック・メディア消費 〜越僑社会の文化交通とポピュラー音楽〜」を執筆しています。

 講座のコーディネーターとしてお誘いいただき、編集者として多大なご指導をいただいた岩渕功一先生には、心より感謝申し上げたいと存じます。

 本書の冒頭で、編者の岩渕先生は、「本書の目的は、テレビ、映画、音楽、マンガなどのメディア文化をとおして、アジア地域において既存の国文化の枠組みを越える、あるいは締めつけるつながりが、歴史的・構造的な不均衡のなかでどのようなかたちで(再)想像=創造されているのかを考察することである」と述べています。ダイナミックな文化交通の模様を描き出す本書、是非、御一読を。

2004年 日吉昭彦


もくじ
 
序章 方法としての「トランス・アジア」:岩渕功一

1. 越えるつながり、越えない文化
  第一章 「日本偶像劇」と錯綜するアイデンティティ
     〜台湾における日本製テレビドラマの消費〜 :伊藤守
  第二章 「犬はあなたで、犬はわたし」
     〜アニメ「フランダースの犬」の旅をめぐって〜 :清水知子
  第三章 タイの歌は聞こえてくるか?
     〜ポピュラー音楽流通の非対象性をめぐって〜 :松村洋

2. ナショナル化されるトランスナショナル
  第四章 東アジア・テレビ交通のなかの中国
     〜韓国と台湾の番組を中心に〜 :青崎智行
  第五章 「韓国マンガ」という戦略
     〜グローバリゼーション・「反日」・儒教文化〜 :山中知恵

3. 内なる「越境アジア」
  第六章 円環の外へ
     〜映像にみるアジア・沖縄へのまなざし〜 :田仲康博
  第七章 「在日音楽」という想像力
     〜コリアン・ジャパニーズ・ミュージックの(不)可能性から、
      音楽が「在日」することへ〜 :東琢磨
  第八章 ベトナム系住民とディアスポリック・メディア消費
     〜越僑社会の文化交通とポピュラー音楽〜 :日吉昭彦


◆ 掲載の一部 ◆
※本文は、「越える文化、交錯する境界」の、日吉担当分の第八章の冒頭部分の一部を掲載したものです。ご関心を持っていただけた方は、是非、本書をご購入ください。

ベトナム系住民とディアスポリック・メディア消費
      〜越僑社会の文化交通とポピュラー音楽〜

日吉 昭彦

海外ベトナム系メディアの交通と越僑社会

 二〇〇三年四月、海外に移住したベトナム系のジャーナリストやメディア制作者が集う第一回「海外ベトナム系メディア会議」が、アメリカ・カリフォルニアの「リトルサイゴン」で開催された。世界各地のベトナム語メディア関係者が交流の機会を持つという目的で開かれたものである。
 ベトナム戦争が終結を迎える一九七五年から、急速な共産化を恐れた多数のベトナム人が母国を脱出して難民となり、世界に離散する現象がみられた。海外で生活するベトナム系住民の数は現在、約二〇〇万人ともいわれている。世界各地に離散した人たちは、華僑ならぬ越僑とよばれており、各地で大小さまざまなコミュニティを形成している。点在する越僑コミュニティには、各コミュニティを基盤としたベトナム語のメディアがある。「海外ベトナム系メディア会議」は、このようなメディアの関係者が国境を越えて集うという、はじめての試みであった。
 開催にあたって「ベトナム系ジャーナリスト協会」が組織されたが、登録したメディアの数はおよそ一二〇に上る。その大半は世界の越僑の半数が暮らしているアメリカのメディアであるが、カナダやオーストラリア、また東欧のメディアなども登録している。この中のひとつには、日本で制作されているベトナム語のメディアも含まれている。東京の品川でベトナム系住民向けのコミュニティ・ショップを経営し、ベトナム語の雑誌「月刊メコン通信」を発行している在日ベトナム人の編集者がこの会議に参加した。
 参加した在日ベトナム人編集者によると、会議といっても講演があった以外は親睦会の雰囲気であったという。しかし、この出来事からわかるのは、世界各地の越僑コミュニティ・メディア相互のつながりによってトランスナショナルに結ばれる越僑社会の存在である。難民として故郷を離れたもの同士、同胞の動静は、国境を越えた関心事であり、各地のコミュニティのニュースがメディアをとおして越僑社会に伝えられている。例えば、「月刊メコン通信」は、この会議の模様を紙面で大きく取り上げている(2003年6月、第96号)が、これはベトナム語のメディアを通じて、日本も越僑社会の文化の交通圏になっているということである。
 社会主義体制を持つベトナム社会と越僑社会は、政治意識の上では対立関係にあるため、リトルサイゴンのような巨大コミュニティは、生活の拠点であると同時に反共意識の拠点でもある。こうした社会意識は越僑社会を貫くものでもあるし、政治意識を基盤に成立しているメディアもある。言論活動だけでなく、ときには文化表象にも政治的な意識が立ち現れている場合も少なくない。特に一九七十年代後半からの十年間は、難民として海外に渡ったベトナム系住民は、祖国への帰国も許されず、手紙や送金などの交通があった以外、二つの社会は事実上、分断していた。越僑のメディア文化はこうした分断のなかで生まれたものでもあった。
 一方、近年では、一九八十年代後半に始まったベトナムの政治経済的な自由化政策であるドイモイ(刷新)政策のもと、難民のベトナム入国が実現し、さらに九十年代後半からは越僑資本の取り込みも活性化してきている。人や資本の流れの変化のなかで、越僑のメディア文化やその文化交通のあり方も変化しており、いわばディアスポリック・メディア文化圏とでも呼べるような、国や地域を越えて越境的なつながりを持ち合わせる文化圏が作られてきている。ディアスポラとは離散という意味で、祖国から離れて生活する人々をさす言葉である。祖国を離れて独自の文化を作り出してきた越僑のメディアを、ディアスポリック・メディアとここでは称しておきたい。それはメディア文化の交差空間としての、あらたなベトナム文化圏といえよう。
 本章は、ディアスポリック・メディアが作り出してきたポピュラー文化、とくにその国境を越えた文化交通のあり方やメディア文化表現の実践・消費について、ポピュラー音楽を中心におもに日本の事例から考えていきたい。以下ではまず、越僑のさまざまな文化表現活動のなかでも、もっとも成功したものの一つと考えられているアメリカにおける越僑のポピュラー音楽文化の発展について紹介し、つぎに在日ベトナム系住民のメディア表現や文化実践について考察していく。

→ 続きにご関心がある方は、是非、本書をご購入ください。




 
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