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Duce h.p... / BOOKS

大修館書店から発売されている
「ワールドカップのメディア学」のご紹介です



定価(本体2000円+税)
 「ワールドカップのメディア学」

編 者:牛木素吉郎/黒田勇
出版社:大修館書店
出版年:2003年
 (ISBN4-469-26536-5)

 テレビの時代からインターネットの時代へ。スポーツは、マスメディアとともに発達し、変貌してきた。世界最大のイベント、ワールドカップを題材に、スポーツとメディアの未来を考える。

 ワールドカップの熱狂の背景に動いたマスメディア。2002年ワールドカップを題材に日韓のジャーナリストと研究者がその実相を追求。


 2003年10月に発刊されたこの本は、兵庫大学の牛木素吉郎先生と、関西大学の黒田勇先生が編集した書籍です。

 本の扉に「サッカーのワールドカップは、世界の大衆を熱狂させる地球上で最高のスポーツ・イベントとなった。その陰で新聞、テレビなどのマスメディアはどのような役割を果たしたのだろうか」とあります。メディア・スペクタクルとしてのワールドカップ。そのスペクタクルに大きく二部構成で迫っています。

 日吉は、この本の第2部第4章「テレビ中継は何を語ったか 〜試合の実況アナウンスの内容分析」という部分を執筆しています。実況アナウンスの言葉を定量的に内容分析した結果を報告しています。地上波で放映されたワールドカップの試合中継のうち、出場各チーム一試合分づつを調査対象に、アナウンスのスピーチを分析しました。アナウンサーはどの選手をどの程度、紹介していたのでしょうか。アナウンスを通じて説明されたモチーフにはどのようなものがあったのでしょうか。実況アナウンサーはどのような知覚方法で選手を言葉にし、説明していていたのでしょうか。それぞれ統計調査によって実証的に明らかにしています。さらに、多変量解析によって、実況アナウンスを通じて現れていたワールドカップ出場各チームのメディア・イメージを分析しています。

 本書、第一部はメディアを発信するジャーナリストの視点から・・・メディアとワールドカップはどのようにお互いにサポートしあってきたのでしょうか。サッカーマガジンのスポーツ時評でお馴染み、編者の牛木先生が、ワールドカップのメディア史を分かりやすく解説しています。メキシコ大会「マラドーナ!」5人抜きアナウンスで伝説のNHK山本浩アナは、放送席からワールドカップを伝える仕組みを。「情報は血液だ」「放送席の空気と風」「スピードをあげよ」などの言葉とともに、躍動感あふれる現場を知ることができます。英雄ヒディングはどのように生まれ、その衝撃は韓国でどのように受け止められていたのでしょう。朝日新聞のスポーツ面でいつも的確な論評をなさっている中小路徹さんが、韓国代表をベスト4に導いたヒディング監督の衝撃的な活動を伝えています。共催のパートナーとして韓国メディアはどのように日本チームを伝えたのでしょうか。韓国スポーツToday紙の記者である金徳起さんが、韓国人の目から見た日本代表チームとトルシエ監督について伝えています。

 第二部はメディアを読解するメディア研究者の視点から・・・メディアの中だけでしか見ることのなかったフーリガンとは何ものだったのでしょう。編者の黒田勇先生がスペクタクルとしてのフーリガンの実像に迫ります。韓国サポーターの代名詞レッドデビルは、実は企業広告によって作られていた・・開催の前後数年を韓国で研究を続けた同志社大学の森津千尋さんがメディア・イベントとしてのレッドデビルの側面に迫ります。日韓友好、PRODE OF ASIA・・さまざまな言葉とともに日韓関係が語られたワールドカップで、韓国メディアはどのように『ニッポン』を描いたのでしょうか。立命館大学の黄盛彬先生が迫ります。実況アナウンスが伝えた世界を、アナウンスの言葉から読み解くと、どのようなことが分かるでしょうか。日吉が担当しています。ワールドカップとは日韓両国の人々にとって、どのようなイベントだったでしょう。世論調査から同志社大学の尾嶋史章先生と関西大学の小林大祐先生が迫ります。ワールドカップ放映権高騰、冒頭の裏側の事情に何があったのでしょう。NHK文研の曽根俊郎さんが迫ります。
 その他、東亜日報の金忠植さんや産経新聞の黒田勝弘さんのエッセーも掲載されています。

 メディア・スペクタクルとしてのワールドカップ。そのスペクタクルに大きく二部構成で迫る本書、是非、御一読を。

2003年 日吉昭彦


もくじ
 
はじめに
    〜ナショナル・プライドからメディア・スペクタクルへ:黒田勇

第一部 メディア発信の現場から
  ワールドカップとメディアの歴史:牛木素吉郎
  放送席の現実 〜縦に伝えたワールドカップ:山本浩
  韓国代表とヒディング監督:中小路徹
  韓国の記者がみた日本代表チームとトルシエ監督:金徳起/森津千尋訳

第二部 ワールドカップとメディア 〜さまざまな現象を読み解く
  メディア・スペクタクルとしての「フーリガン」:黒田勇
  メディアイベントとしての街頭応援 
     〜レッドデビル(赤い悪魔)の真実:森津千尋
  韓国メディアの描いた「ニッポン」:黄盛彬
  テレビ中継は何を語ったか
     〜試合の実況アナウンスの内容分析:日吉昭彦
  日韓共催と世論の動向 
     〜ワールドカップを通してみえてきたもの:尾嶋史章・小林大祐
  暴騰が残した不安 〜ワールドカップの放送権ビジネス:曽根俊郎

エッセイ
  ワールドカップをめぐる韓国メディアの総括:黒田勝弘
  ワールドカップがもたらした日韓関係の好転            〜メディアの側面:金忠植

  あとがき:常木暎生
  メディア・スポーツを学ぶ人のための参考文献・資料一覧
  スポーツ・サッカーとメディア年表
◆ 掲載の一部 ◆
※本文は、「ワールドカップのメディア学」の、日吉担当分の冒頭部分の一部を掲載したものです。ご関心を持っていただけた方は、是非、本書をご購入ください。

テレビ中継は何を語ったか
      〜試合の実況アナウンスの内容分析〜

日吉 昭彦

はじめに

 第10回ロサンゼルス・オリンピックが開催された1932年は「日本がオリンピック競技を初めて中継放送した」(竹山、2002)年である。当時の放送メディアはラジオだった。メディア史研究者の竹山は、実はこの大会のアナウンスは「実況放送」ではなく「実感放送」であったという。放映権料の問題からオリンピック委員会はアメリカ国内の中継放送を許可せず、結果的に日本も中継放送ができなかった。しかし、アナウンサーはスタジアムで競技を見た後に、放送局に戻り、まるで実況放送が行われているかのように、アナウンスを吹き込んで、競技を再現してみせたという。声のメディアが作り出したもう一つのスタジアムがあったのである。
 日本でラジオの広告費が初めて減少し、一方、テレビ契約数が1000万を越えた1962年。日韓W杯開催の40年前、チリでW杯が開催されたこの年に、日本放送出版協会が発行する「新アナウンス読本」は、「即時描写」や「即事描写」という方法論に基づいた、音声のスポーツ・アナウンスが、映像に取って代わられることはない、ということを強調している。カメラによって「即時描写」の代行がなされるなか、テレビの実況中継は「画主音従」になるが、映像制作側とチームプレイのなかでアナウンスの補助的な「即時描写」の必要性は高く、また、質的にも量的にも解説的なアナウンスが要求されるという(NHK、1962)。
 それぞれの時代にそれぞれの実況アナウンスがある。
 竹山は、1930年代の国内での野球の実況中継の模様を分析し、ラジオの実況アナウンスの方法論における「面白く」から「正確に」への変化には、モダニズム化という「日本社会の変質が反映されている(竹山、2002)」と述べている。NHKアナウンサー史編集委員会は、テレビの実況アナウンスは、映像との調和の必要性やスポーツの国際政治的な役割の変化など、メディアや社会の変化のなかで、スピーチにある情緒性や娯楽性と客観性のバランスなどを模索してきたという(NHKアナウンサー史編集委員会、1992)。
 スポーツをどのように伝えるかを探究してきた実況アナウンスは社会の変化を反映している。実況アナウンスは、スポーツをめぐる時代のコンテクストをも「即時・即事」的に描写している。
 2002年W杯のフランス対ウルグアイ戦(テレビ朝日放映、6月6日)後半、入場してくるウルグアイのダリオ・シルバ選手を映すテレビ映像について、実況アナウンサーは、国際映像のカメラワークでの注目がこの試合での注目になるだろう、と解説している。W杯の実況アナウンスには、スタジアムで日本のアナウンサーが何を見たかに加えて、国際映像を制作するヨーロッパ中心に展開するグローバルな映像ビジネスの視点が、二重写しになっているのである。黒田は、国際的なメディア・スポーツが「グローバルビジネスがナショナルを介して自らを表現(黒田、2003)」することについて論じているが、実況アナウンスにも同様のことが言えるのではなかろうか。
 では、2002年のW杯のテレビ中継は何を語ったのか。実況アナウンスについて、何をどのように伝えたのか、そのアナウンスの方法に着目しながら、メディアの内容分析という方法を用いて明らかにし、そこに反映しているスポーツをめぐる時代のコンテクストを考察していきたい。

→ 続きにご関心がある方は、是非、本書をご購入ください。




 
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出版を記念して「ワールドカップとメディアを語る」と題された講演会(2003年10月13日)が開催されました。右から講演者の牛木先生、テレビ東京アナウンサーの金子勝彦アナ、司会の黒田先生です。

講演会の後は、記念の懇親会が開かれました。司会はなんと、プロのアナウンサーの山本浩さん!



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