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「2002年ワールドカップ・サッカーのなかの人間表現
〜 地上波テレビ放送の内容分析調査 〜

日吉昭彦(成城大学 東京経済大学 武蔵大学 非常勤講師)

日本マス・コミュニケーション学会 秋期研究発表会 要旨より
(日本大学文理学部 )
2002年6月18日(土)




発表要旨

  【キーワード】ワールドカップ・サッカー/国際化/エスニシティ表現/ステレオタイプ/内容分析

 本研究は、2002年に開催されたワールドカップ・サッカーの中継放送のなかで、ゲームを担い、また中継を演出する上で取り上げられた選手やゲストなどが、どのように表現されていたのか、内容分析調査により明らかにするものである。日本の地上波テレビで放映された全実況中継40試合および開会式、閉会式の中継を対象として、アナウンサーや解説、司会者、コメンテーター、ゲストなどが、選手や審判、監督、サポーター、観客、来賓、ゲストなどに対して言及した発話を中心に定量的/定性的に分析し、中継放送のなかの人間イメージについて明らかにするものである。国際的なスポーツ・イベントの報道における、人間表現のステレオタイプ化の傾向や人種やエスニシティによる表現の違いを明らかにすることが目的である。

 2002年のワールドカップ・サッカーは、国際的なスポーツ・イベントであり、日本と韓国で共同開催されたことからも、極めて大きな関心を集め、日本中を席巻する社会現象となった。開催期間中のテレビ中継は高い視聴率を集め、オープン・スペースで実況中継を視聴するスタイルが流行するなど、テレビの役割という観点から再考を促されるようなメディア現象も見られた。他方、共同開催国である韓国との多方面にわたる国際交流事業の展開をはじめ、開催各地における来日した選手やサポーターとの草の根交流や、応援を通じた異文化理解など、スポーツをめぐる国際交流が大きな関心を集め、日本の国際化という観点からも一つの社会変動をもたらしたといえよう。

 テレビはワールドカップ・サッカーを日本の内においても国際的なイベントとした一種の文化装置である。しかし、この現象においてマス・コミュニケーションの一つの中心的役割を担ったテレビ中継は、異なる文化的背景を持ちあわせるワールドカップ・サッカーの主役たちを、多様性のある表現で描き出していたであろうか。

 内容分析調査により、スポーツ番組における人間表現を明らかにした内容分析調査による先行研究に、Rainville と McCormick(1977年)や Saboら(1995年)の研究がある。これらの研究は、スポーツ中継報道における人種関係やエスニシティに着目し、人種主義的なアナウンスの叙述の存在やステレオタイプ化の傾向、またそうした表現の改善傾向を明らかにしている。日本のワールドカップ・サッカーの中継放送においては、明らかな偏見的な描写は見当たらないが、選手を動物に例えるなどの単純なステレオタイプ化の傾向が見られるほか、賞賛における身体的特性への着目が多いと言える。

 調査は、第一に、試合中継の前後とハーフタイムにおけるスタジオからの放送を対象に、編集されたVTRやインタビュー等で紹介される人物について、登場の役割や出身チーム、出身地などにより定量的に分類集計するとともに、その紹介のされ方を定性的に分析した。こうして紹介されるものは、多様な出身地を持つチーム構成と対応しておらず、特定のチームや日本との関連などによって偏りが見られる。全中継における人物紹介や露出を通じて、国際的なスポーツ・イベントにある文化的な多様性の一旦を担ったとはいいがたい。

 第二に、各チームごとに最初に放映された対戦を対象に(例えば、ブラジルであれば、複数回の放映があったが、6月8日の対中国戦が最初の放映)、中継のアナウンスと解説の分析を行った。アナウンサーや解説者が、具体的な個人名を挙げて発話をした部分を抽出し、さらにどのような説明がなされているかを「プレイと関連した賞賛あるいは批判、プレイと関連しない賞賛あるいは批判」「過去の業績への言及、過去の背景への言及」「身体的特性への言及」「感情移入や同情、応援」などの項目で分類した。具体名を挙げるだけの発話や、ピッチ上の行動を述べただけの発話はその数を集計した。言及される個人名の数はチーム等によって数に偏りがあり、均等な描写がなされていない。また、「身体能力の高さ」などの表現が数多く用いられるなど、特定のイメージが評価に用いられやすい傾向が見られる。「身体的特性」への着目は、過去の先攻研究ではエスニシティと関連しているという点からの批判もあり、ステレオタイプ化という観点からも課題の一つといえるであろう。

 これらのデータに加えて、決勝トーナメントまでの対戦を対象に、チーム特性や地域特性などの言説を定性的に整理し、ワールドカップ中継における人間表現のイメージを総合的に検証する。 

 詳細な結果は当日にデータを示しつつ、報告を行うことにしたい。



 
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