1. はじめに
本稿は、日本のテレビ広告で表現された「外国人」登場人物に着目し、内容分析調査の方法を用い、その表現傾向を数量的な観点から明らかにするものである。
本調査に先だち、例えば近年のニューカマーと呼ばれる日本在住外国人の増加傾向などの事例が見られる「内なる国際化」という社会現象のなか、メディアに登場する「外国人」登場人物の人間像にもなんらかの変化があるのではないかと考えた。社会現象の動きの過程でメディア表現に変化が見られたことを明らかにした研究事例に、民族的「少数派」のテレビ表現について、Seggarらがアメリカで1970年代に行われた調査を比較したものがある(2)。時系列的に比較・1覧できるこれらの研究では、公民権運動を背景に民族的「少数派」が表現される機会は増したが、それをキャンペインとしてとらえるメディアの姿勢のなかで固定したイメージが生まれるとともに、次第に減少していったことが明かにされている。アメリカと日本の社会環境の違いを考慮すればこれらの知見を簡単には応用できないが、現在の日本での社会現象の動向を踏まえて、メディア表現の変化を登場人物の観点から関心を向ける意義はありそうである。
先行研究として日本のメディアの「外国」要素を分析する研究がある(3)。これらの研究ではたびたび表現における欧米指向の強さが指摘されてきた。「外国人」登場人物も「外国」要素の分析対象として同様の傾向がみられるとされてきた。そこで本稿ではテレビ広告を分析対象とした先行研究を参考に「外国人」登場人物の表現の比較を行った。その結果、本調査でも同様の傾向が見られたのであるが、「外国人」登場人物に関しては若干の変化が見られた。そこで、登場人物に与えられた役割表現の頻度およびその偏向に注目し、数量化した調査結果の報告から、「外国人」登場人物の表現の変化と現状を明らかにしたい。
様々な背景を持ち合わせる人間同士の相互理解は現代的な課題の1つである。マス・コミュニケーションはこの課題といかに対峙するのか。テレビ広告の「外国人」登場人物の表現についての本分析が、この問題を考える1資料となれば幸いである。
2. 内容分析の方法
原資料として、1995年7月1日(土曜)午前7時からから7月3日(月曜)午前7時までの週末の、在京の民間放送キー局(日本テレビ/TBSテレビ/フジテレビ/テレビ朝日/テレビ東京)計5局の全放送内容をすべてビデオに収録し、分析を行なった。以上の対象を以下の項目ごとに分類して数量化し内容分析を行った。
項目の分類について説明する(4)。内訳はFCT(1991)の研究や、アメリカにおけるメディアの「人種」表現に関する各種調査を参考に作成し、筆者のパイロット・テストを経て独自の修正を施して作成したものである。
まず、原資料から広告を分類し、放送日/放送局/時間帯/広告サービスの内容を記録した。次に「外国人」が登場するテレビ広告を分類した。さらに登場したすべての「外国人」登場人物に対して、与えられた役割としての「人種」/「性別」/「年齢層」の分類を行った。その上で、広告の文脈から「役割の重要度」/「発話した言語」/「日本人」登場人物との人数関係/「理解できる職業」を記録した。
同内容のテレビ広告が複数回放映された場合も重複して記録している。同じテレビ広告の同じ登場人物が何度も登場した場合にもカウントされている。計算の単位はテレビ広告の全体量に関するものは放送回数で、登場人物に関しては人数である。
次にコーディング作業に関してであるが、分類にかかる膨大な時間の都合上、筆者が単独で行い複数のコーダーによる分類はなされていない。方法的に課題が残るが、調査の精度に関してはすべて筆者に責任がある。
以下に分類上の基準を示す。
テレビ広告は、特定時間内において一つのサービス内容を扱った「商業広告、番組宣伝、公的サービスの告知」とし、放送開始と終了前の放送局のアナウンス及び、番組内に組み込まれたものは含めていない。サービス内容の内訳は業種ではなく、広告されている製品を中心に分類し、同一の企業が異なるサービスに分類されることもあった。企業広告に関しては広告アナウンスから適切と思われる項目に分類した。業種やサービス内容による分類は、調査や年代によって種目が様々であり標準をとらえづらいので、各種調査を参考に筆者が修正を施して独自に作成したものである。
登場人物に関するすべての基準とした情報は、テレビ広告そのものに含まれる視聴覚情報に限定し、画面上で身体的外見や使用する言語、広告上のアナウンスなどから判断した。送り手に製作意図/製作の現実を尋ねることは避けた。
「外国人」登場人物は上記の基準から導いた。テレビ広告では、出身地や国籍、民族集団への所属の表明、明確な性別や年齢などのアナウンスはほとんど見当たらなかった。そこでコーダーが判断できる身体的外見の特徴および音声、衣装などからのみ以下の項目を決定し分類した。アナウンスのあった場合はそれを加味して分類した。
「人種」の項目は、大きく5項目、「白人系」/「黒人系」/「アジア系」/「その他」/「混在集団」に分類した。項目名には肌の色と地域を示唆する言葉が混在しているが、「白人系」/「黒人系」項目では主に肌の色を手がかりに、「アジア系」/「その他」項目ではそれに加え文脈で提示された文化的情報を手がかりに分類作業を行った。
「性別」の項目は「男性」/「女性」に分類した。
「年齢層」の項目に関してはその基準となった範囲を示しておく。「子供」は約0-9才/「若者」は約10-19才/「青年」は約20-35才/「中年」は約36-50才/「初老」は約51-75才/「老人」は約76才以上、を基準に分類した。
なお人数の分析単位として「集団表現」があるが、萩原ら(1987)が述べるように「特定の個人ではなく集団に焦点をあわせた描写がなされる」場合の分類である。「集団表現」に関して「人種」/「性別」/「年齢層」が特定できた場合は分類されている。
「役割の重要度」に関する項目は「主人公」「準主人公」「脇役」に分類した。この項目は、「外国人」登場人物がテレビ広告の表現において主要な要素として描かれているか、あるいはより周縁的な要素として描かれているかを、大きく3分類で数量化するためのものである。目的上、分類には観点の異なる基準が混在するが、以下に簡単な例示とともに基準を示す。
遠景を描写した中のみで登場したり、ある場面の背景の中で登場した場合は「脇役」と分類された(例えば、沖で海水浴をする人、町を歩く人達など)。「主人公」の基準は以下のようになっている。まずは明らかに表現上で焦点が当てられている場合で、その上で、第1に、主体と客体が入れ替わりながら描写される登場人物で、明示的なコミュニケーション内容に主従関係があまり認められないもの(例えば、数人の会話、見つめ合う2人など。1つのテレビ広告で複数の「主人公」が分類される)。第2に、1つのテレビ広告で連続的に登場しているもの(例えば、洗髪した登場人物がその後に外出する、乗り物を運転しているなど)。第3にテレビ広告のナレーションをするもの(製品の利用経験を話すタレントなど)。「集団」が描写の中心で広告のナレーションをするような場合は「主人公」とした。「準主人公」は、明らかに表現上で焦点が当てられているが、「主人公」ではない登場人物である(例えば、相槌をうつだけのもの、「主人公」の職業や人間関係、行為を明確にするために登場したもの)。
「発話した言語」の項目は、聴覚情報から発声した登場人物を集計した。その後に「英語/日本語/その他の言語/擬声語や擬態語など」に分類した。
「日本人」登場人物との人数の関係は、「日本人」登場人物の人数を集計し、「外国人」登場人物のみの場合、「日本人」登場人物よりも「外国人」登場人物の人数が多い場合、「日本人」登場人物の方が「外国人」登場人物よりも人数が多い場合、同数の場合に分類して集計した。
コーディング作業終了後に統計的処理を行った。結果は次のとおりである。
3. 分析対象となったテレビ広告について
サンプルは5局合計で240時間、うちテレビ広告は40.3時間で、サンプルとなった放映時間の16.8%にあたり、テレビ広告本数は8074本である。そのうち「外国人」登場人物を含むものは1449本で、テレビ広告全体の17.9%にあたる。放送局/広告サービスの内容の内訳から分析対象の概略を表1-1/1-2に示す。

前掲の「外国」要素に関する諸研究で萩原(1994)や小坂井(1996)が「外国人」登場人物を含むテレビ広告の割合についてまとめているが、どの報告も約15%から20%の割合となっている。本調査でも同様の傾向であまり変化は見られない。
そのうち「外国人」登場人物は、のべ人数で4004人(集団表現は1人として)になっている。
4. 「外国人」登場人物の数量的分析結果
4-1. 「人種」項目ごとの分類結果
まず、登場人物を「人種」の項目ごとに分類した結果、「白人系」登場人物が57・8%と最も多かった。次いで「アジア系」が24.9%、「黒人系」が9.0%、「その他」が5・8%などとなっている(表2参照)。
これまでの日本のテレビの「外国」要素に関する研究ではたびたび欧米偏重が指摘され、「外国人」登場人物が「白人系」の登場人物に偏ることが指摘されてきた。本調査でも同様の傾向がある。
1方、「外国人」登場人物の人数を集計した調査と比較すると、登場人物の内訳の構成には変化が見られた。
小坂井(1996)は、508人の「外国人」登場人物の内訳が「白人系(88.9%)/黒人(5.9%)/その他(5.1%)」であったと報告している。またFCT(1991)は1385人の「外国人」登場人物の内訳が「白人系(84.1%)/黒人系(7.4%)/アジア系(6.9%)その他(1.6%)」であったと報告している。
各調査による項目の内訳の違いを考慮しても、「白人系」登場人物は減少し、それ以外の登場人物が増加している。特に今回の調査では「アジア系」登場人物が目立って増加したことが分かる。
これまでの研究では「外国人」登場人物を日本のテレビ広告の「外国」要素の1つとしてとらえてきた。「白人系」登場人物への偏向は「外国」要素の欧米化の1つであり、日本のテレビ広告に欧米偏重傾向が見られることの1つの説明であった。本調査では「外国人」登場人物の内訳構成の観点から、欧米以外の「外国」要素が4割以上含まれていることが明らかになった。これまでの調査結果と比較することにより、日本のテレビ広告の欧米偏重傾向には一つの変化があったことが考えられる。
4-2. 「性別」項目ごとの分類結果
「性別」の項目ごとに分類した結果(表2参照)、「男性」登場人物が52.7%、「女性」登場人物が37.5%、集団表現などで性別が分けられないものが9.7%となっている。「男性」登場人物が「女性」登場人物の約1.4倍である。「男性」登場人物が「女性」登場人物よりも多くなる傾向は、これまでの「外国人」登場人物についての調査結果でも見られてきた。これらを「人種」項目ごとに見ると、「アジア系」登場人物だけは全体の傾向と異なり、「女性」登場人物が「男性」登場人物の2倍近く登場している。

これまでの調査では「性別」による人数の違いはさほど見られなかったが、たとえば小坂井(1996)と萩原(1994)が、「白人系」登場人物では「女性」登場人物が「男性」登場人物より若干数多いことを示してきた。FCT(1991)によると「黒人系」登場人物でこの傾向が見られた。
本調査では「白人系」「その他」の登場人物で「男性」登場人物が「女性」登場人物の2倍近く、「黒人系」登場人物では4倍近く多く登場していて、「性別」間の偏りは大きい。
「人種」項目の分類結果で「アジア系」登場人物の人数が増加したことを示した。この変化を見せた「アジア系」登場人物は「女性」登場人物の数が「男性」登場人物を大きく上回るという、これまでにない傾向を見せたことが明らかになった。
4-3. 「年齢層」項目ごとの分類結果
「年齢層」の項目ごとに分類した結果、全体では「青年」が6割強を占め非常に多かった。「性別」項目ごとに見ると、「女性」登場人物の7割以上が「青年」として登場するなど、「男性」登場人物よりも、若年層の登場人物が多かった。
項目の内訳の違いを考慮しても、FCT(1991)が指摘するように「女性よりも男性の方が年齢層の幅が広い」こと、また萩原(1994)が指摘する「全体的に女性の方が男性よりも年齢層が低くなる」ことは、本調査でもほぼ同様の傾向であった(表3参照)。

「人種」項目ごとに見ると、特に「アジア系」の「女性」登場人物は「青年」として登場する割合が最も高い。「人種」「性別」項目の分析で「アジア系」の「女性」登場人物にこれまでにはない傾向が見られた。しかし、新たに多く登場した「アジア系」の「女性」登場人物を「年齢層」の内訳構成の観点から分析すると、これまでの「外国人」登場人物の研究にあった若年指向の傾向が、より強い形で表われていることが明らかになった。
また、登場した人数は少なかったが、「黒人系/その他」の「女性」登場人物が「子供」として登場することが4割近くと多かった。「黒人系」の「男性」登場人物は「青年」として登場することが多かった。
4-4. 「役割の重要度」項目ごとの分類結果
「役割の重要度」の項目ごとに分類した結果、「主人公」の登場人物が47・6%、「準主人公」が30.2%、「脇役」が20.1%などに分類された。これを「性別」項目ごとに見ると、「男性」登場人物の方が「女性」登場人物よりも「主人公」や「脇役」として登場しやすく、「女性」登場人物は「準主人公」である割合が高い(表4参照)。

それらを「人種」項目ごとに見て、全体の傾向や「性別」ごとの全体の傾向と比べると、「役割の重要度」の違いは明白に表われた。
「白人系」登場人物は「男女」とも「主人公」として登場する割合が全体の傾向よりも1割程度多い。「準主人公」として登場する割合は1割程度少ない。
「黒人系」登場人物は全体の傾向と異なり「男女」とも「脇役」として登場することが多い。「黒人系」登場人物の「男性」の場合、「性別」項目ごとにみた「男性」全体の「脇役」登場人物の割合の2倍程度、「黒人系」登場人物の「女性」の場合は、「女性」全体の3倍程度となった。
「アジア系」登場人物は「準主人公」として登場する割合が高く、全体の傾向の約2倍程度である。さらに「性別」項目ごとに見ると「男性」と「女性」で異なった傾向が見られた。「アジア系」登場人物の「男性」の場合、「主人公」としての登場の割合が14%と目だって低く、「準主人公」として登場する割合は、「男性」全体よりも3割程度多い。「脇役」としての登場も26.4%と「男性」全体よりも1割程度多い。「アジア系」登場人物の「女性」の場合は、「主人公」としての登場は「女性」全体よりもやや低く、「準主人公」としての登場は2割強ほど多く、「脇役」としての登場は2.3%と目だって低い。全体的に「男性」登場人物の方が「女性」よりも「主人公」として登場する割合が高かったが、「アジア系」登場人物だけは「女性」の方が「主人公」である割合が高い。
「その他」の登場人物は、「男性」の83.1%、「女性」の60.5%が「主人公」として登場し、全体の傾向よりも「主人公」として登場する割合が高い。また「男性」と「女性」で異なった傾向が見られた。「その他」の登場人物の「女性」の場合は「脇役」としての登場が32.1%、「男性」は1.6%と大きく差が見られる。
「外国人」登場人物が登場するテレビ広告の表現において、「白人系」「その他」の登場人物は主要な要素として描かれていて、「黒人系」「アジア系」の登場人物はより周縁的な要素として描かれていることが明らかになった。
さらに「主人公」に着目すると、その72.3%は「白人系」登場人物であった。「役割重要度」の観点から、「主人公」の登場人物は「白人系」登場人物に偏っていることが明らかになった。
「役割の重要度」の項目の分類には、コーダーの主観が入り込む可能性がその他の項目よりも大きいと考えられる。そこで参考までに「外国人」登場人物が1人だけ登場したテレビ広告についての分析を試みた。「外国人」登場人物が1人だけ登場する場合には、表現においての役割の重要さが明瞭になると考えられるからだ。
「外国人」登場人物が1人でも「日本人」登場人物が同時に登場する場合がある。「日本人」の登場しない「外国人」登場人物が1人のみが登場した広告は275本で、「外国人」登場人物を含む広告のうちの19.0%である。うち236本、85.8%は「白人系」登場人物が登場していた。「黒人系」は1本、「アジア系」は29本、「その他」が9本となっている。「性別」項目による差はあまり見られなかった。
全「外国人」登場人物の4分の1を占める「アジア系」登場人物は、人数は多いが、個別の登場人物が特定の役割を与えられるような表現が少ないと言えるのではないだろうか。
登場人物についての描写を自由記述で集計したので、そのうち「職業」が理解できたものについて、「役割重要度」の項目ごとにごく簡単な分析を行いたい。
「白人系」登場人物で理解できた「職業」は「主人公」で48種類。「準主人公」で47種類である。それに対して「アジア系」登場人物の「主人公」は7種類、「準主人公」で14種類であった。詳細な登場人物の描写の分析は数量化が難しいのでここでは行わない。しかし「職業」を役割表現の1つとしてとらえるなら、「アジア系」登場人物の「職業」の種類の少なさだけでも、個性の見えない「アジア系」登場人物像がテレビ広告に表われていたと言えないだろうか。
4-5. 登場人物の組み合わせについて
これまで登場人物に対する分類結果を中心に分析を試みたが、参考までに個別のテレビ広告を単位とした分析結果を示しつつ、これまでの分析を整理してみたい。
テレビ広告に「外国人」登場人物が登場した場合、「人種」「性別」「人数」の組み合わせは幾通りあったのかを分析した(「白人系/男性」が1人登場、「白人系/男性」1人と「アジア系/男性」が1人など、組み合わせすべてをみた。なお「日本人」登場人物との組み合わせは含まれていない)。
組み合わせの数は100通りであった。そのうち31通りの組み合わせで、「人種」項目で異なる分類がなされた登場人物が同時に登場した。69通りの組み合わせは「人種」項目の同じ登場人物のみが登場していた。異なる「人種」項目に分類された登場人物が、1つのテレビ広告に登場することは少ないと言える。同時に登場する場合の組み合わせでは、「白人系/黒人系」登場人物の組み合わせが12通り、「白人系/その他」が9、「白人系/アジア系」が6、「白人系/黒人系/その他」が3、「白人系/アジア系/その他」が1、全部同時に登場したものはなかった。
これまでの調査結果と比較し、「アジア系」登場人物の増加傾向により欧米指向に変化が見られたと指摘した。しかし、「アジア系」登場人物はこれまでの「白人系」登場人物の多い欧米指向の傾向のあるテレビ広告に登場しているのではなく、別の傾向の見られるテレビ広告に登場していることが考えられる。実際、「白人系」と「アジア系」登場人物が同時に登場した組み合わせのテレビ広告は43本と少なかった。
組み合わせのうち、もっとも多かったのは「白人系」登場人物の男性が1人で登場した場合で、416本(「外国人」登場人物を含む広告1449本の28・7%)であった。次に多いのは「白人系/女性」登場人物が1人で登場する場合で97本(6.7%)、3番目に多いのは「白人系」登場人物の「男性/女性」が1人づつ登場するもので84本(5.8%)などとなっている(「日本人」登場人物と同時に登場した場合を含む)。「外国人」が登場するテレビ広告の多くは「白人系」登場人物が少数で登場するのである。
「白人系」登場人物のみが登場したテレビ広告は、1人で登場する場合が最も多く513本、以下、2人(166本)、3人(55本)などとなっている。1方、「アジア系」登場人物のみが登場したテレビ広告は、5人で登場する場合が最も多く35本、以下、1人(29本)、3人(26本)などとなっている。この組み合わせの例から、「白人系」登場人物の1人登場するテレビ広告が、複数登場するものより圧倒的に多いことが分かる。また「白人系」登場人物と比較して、「アジア系」登場人物の登場するテレビ広告では、1度に多くの人数が登場している傾向があることが分かる。「役割の重要度」の項目の分類で「アジア系」登場人物に「準主人公」が多かったのは、このような傾向によるものと考えられる。
4-6. 「発話した言語」項目ごとの分類結果
紙面の都合上、ここからの項目に関しては簡単な結果の報告にとどめておきたい。主に「白人系」登場人物と「アジア系」登場人物との分類結果の違いに着目する。
発話する登場人物の集計を行った。全体の30.3%が発話している。「白人系/男性」登場人物のうち24・3%が発話しているのに対して、「アジア系/男性」は6.8%と少なかった。「白人系/女性」では27.3%が発話し、「アジア系/女性」は37.7%と多く、「男性」と傾向が異なった。発話した言語を大きく「英語/日本語/その他」に分類した結果、「白人系/女性」の55.3%が「英語」、20.8%が「日本語」であるのに対し(「男性」も近似値)、「アジア系/女性」は「英語」を話さず、98.2%が「日本語」であった。
FCT(1991)は、「外国人」登場人物の喋る「外国語」が「欧米系」の言語に偏っていると指摘している。本調査では「アジア系/女性」の場合、明らかに異なる傾向が見られた。これまで見てきたように「アジア系」登場人物は「準主人公」が多く、また組み合わせの観点から1度に多くの登場人物が出演していた。数量化されてはいないが、「アジア系/女性」の「準主人公」の数人が同じ言葉を全員で発話するという文脈があったことを指摘しておきたい。
4-7. 「日本人」登場人物との人数の関係
テレビ広告の本数で集計すると「外国人」登場人物を含むテレビ広告は1449本あったが、そのうち845本(58.3%)は「外国人」登場人物のみが登場した。萩原(1994)の報告では「外国人」を起用した広告の80.0%は日本人が現われていないとある。割合は減少しているが、「外国人」が登場するテレビ広告の大多数は「外国人」登場人物のみが起用されていることに変わりはない。ではそのなかでの「外国人」登場人物と「日本人」登場人物の人数の関係をみてみたい。
「日本人」登場人物と同時に登場した「外国人」登場人物は29.9%である。そのうちの7割近くは「外国人」登場人物の方が「日本人」登場人物よりも人数が多いテレビ広告で登場している。
「アジア系」登場人物はすべて「外国人」登場人物の方が「日本人」登場人物よりも人数が多いパターンで登場した。「男性」の37.7%、女性の47.1%である。それに対し「白人系/男性」登場人物が「日本人」登場人物よりも人数が多いパターンで登場したのは「男性」の10.3%、女性の11.7%である。また「白人系/男性」の12.0%は「日本人」登場人物と同数で登場している。「白人系/女性」登場人物は1.0%と少なかった。「白人系/女性」登場人物の場合は84.1%が「外国人」のみで登場していた。
ここから「日本人」登場人物との関係においても、「アジア系」登場人物は「白人系」登場人物と比べ、より複数の人数で登場することが多いことが確認できる。
4-8. 「外国人」登場人物が登場した広告サービスの内容
広告サービスの内容と登場人物の描写の関係はより定性的な分析が必要と思われるので、簡単に分類した結果を示す。
「白人系」登場人物は「その他(映画紹介や各種文化紹介など)」に21.0%と最も多く登場した。「酒類(11.6%)」「家電(8.0%)」などで多く登場した。また広告サービスの内容の項目のうちすべての項目で登場した。
「アジア系」登場人物は「ファッション(24.9%)」で最も多く登場し、「飲料類(19.7%)」「酒類(16.6%)」などで多く登場した。「白人系」登場人物の多い「家電」には登場していないなど、登場する広告サービスの内容にはばらつきがあった。25の項目中で14種のテレビ広告に登場した。
5. 結論
ここまでの調査項目ごとの集計と分析によって得られた知見は以下の通りである。
これまでの「外国」要素に関する調査研究を参考に分析した結果、「外国人」登場人物を含む広告の量には変化が見られなかった。一方、登場人物の内訳では「アジア系」登場人物の人数が増加し、登場人物の人数の内訳の観点から欧米指向の変化が認められた。
そこで変化の見られた「アジア系」登場人物に着目し、「人種」項目で分類された各登場人物の人物像の違いを「性別」「年齢層」「役割の重要度」などの各項目で分析した。その結果「アジア系」登場人物は、「女性」登場人物が「男性」登場人物よりも多く登場すること、「準主人公」として登場することが多いことの2点で、ほかの登場人物とは異なることが明らかになった。
異なった表現傾向のみられる登場人物の人数が増加していたからといって、これまでの研究で指摘されてきた欧米指向の傾向が単純に変化したとは言えない。「主人公」登場人物や1人で登場する登場人物は「白人系」登場人物に偏っており、この意味でテレビ広告の欧米指向は根強いと言える。
「白人系」登場人物は登場したテレビ広告の種類や、理解できた「職業」の種類も多い。また「年齢層」の幅も若干広いなど、つまり、登場人物の個性が表現されていてかつ、多様性のある表現がなされていたと考えられる。それに対し「アジア系」登場人物は、特定の広告で、同時に多くの人物が登場し、「年齢層」も若年層に偏るなど、限定的な表現がなされていた。「アジア」という枠組みが人間よりも先にたつ、集団化による表現がなされていたと考えられる。
全体的な傾向として、「人種」項目での登場人物の内訳の変化は、欧米化指向という表現姿勢の変化とは結びついていないようである。
以上、調査から明らかになったことを整理したが、「外国人」登場人物の人間像の変化と現状を数量化によって探る目的はある程度までは達成されたと思われる。
最後に本稿に残った課題を提示しておく。1970年代のアメリカの内容分析調査 (5)では、民族的「少数派」の登場人物の増加が、かえってイメージの偏った表現の強調となったことが指摘されている。事例として類似している点は指摘できるが、本内容分析調査のデータからは表現の変化と現状の因果関係を論考するまでには至らなかった。冒頭で調査の背景として掲げた「内なる国際化」という社会現象とメディアの関連についても同様である。受け手との関わりやエスニシティの問題、テレビ広告の現状など、考察に欠ける点が多々あった。今後の課題としたい。
註
(1) 本稿で「」付けで用いられる「外国人」「人種」などの用語は登場人物の分類の項目を表し、調査上の操作的な使用の範囲を越えない。
(2) Hinton et al(1974)、Seggar(1977),Seggar et al.(1981)など
(3) Haarmann(1989)、Ramaprasadら(1990)、FCT(1991)、萩原(1994)、小坂井(1996)などは広告の内容分析を行なっている。また萩原ら(1987)の番組の分析、川竹(1985)、山中(1995)などで言及されている。なお本論でしばしば比較するFCT(1991)の調査の概要であるが、1990年6月の1週間の午後7時から9時までの時間帯に放映されたテレビ広告を対象とし、「外国人」登場人物については「人種・国籍/男女/年齢/役割/日本人との関係」などを調査項目とし、放映回数および登場人物の人数で集計している。また萩原(1994)は、1993年6月の1ケ月の8時から24時に放送されたものを対象とし、「人種/性・年齢/日本語/日本人との関係」などを調査項目とし、放映されたテレビ広告の種類および登場人物の人数で集計している。小坂井(1996)は、調査自体は1986年に行われている。2週間の視聴率の高い時間帯のうち1日あたり10時間を無作為抽出し、調査項目はほぼ同様で放映回数および登場人物の人数で集計している。紹介しきれないがどの調査も項目や対象は多岐にわたり知見の幅も広い。
(4) 紙面の都合上コーディング・シートは示せないが、別稿「メディアの「外国人」表現」(日吉・成城大学大学院修士論文1996)には項目の詳細と本稿で触れない調査項目について掲載してあるので参照していただきたい。
(5) 前掲のSeggarらの研究や、季節の比較を含むDominick(1970)の「黒人」表現の分析、O'Kellyら(1976)の「黒人」表現と性役割表現の分析、Greenbergら(1982)のメディアの「少数派」表現に関する調査の引用の多い文献を参考。
参考文献
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Haarmann,Harald, "Symbolic Values of Foreign Language Use: From the Japanese Case to a General Sociolinguistic Perspective", Mouton de Gruyter Berlin/New York, 1989
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