本論文は、1993年に成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科を卒業するにあたり提出した学士論文です。以下は要旨。
- 序章 序論
- 第1章 コミュニケーションとしての音楽・人間・メディア
- 第2章 トレンディードラマの現象と原因
- 第3章 メディアミックスと商業主義メディアに関する一考察
- 第4章 ドラマ・現実・虚構
- 第5章 「101回目のプロポーズ」に関する内容分析
- 第6章 「東京ラブストーリー」に関する内容分析
- 終 章 終りに
1991年、200万枚を軽く越えたセ−ルスを記録した曲が2曲生まれた。小田和正の歌う<ラブストーリーは突然に>とChage&Askaの歌う<SAY YES>である。両曲ともフジテレビのTVドラマ「東京ラブストーリー」と「101回目 のプロポーズ」の主題歌であった。この現象にみられる、TVドラマと主題歌の人気の周辺に存在するいろいろな「力」、「心」、「モノ」を分析し、そこに表れた現代社会とメディアの関係に迫る。
トレンディードラマの流行という現象は、マス・コミュニケーションの過程の結果である。この流行現象は、TVメディアと人間のコミュニケーションによって、結合され体系化された、ある心理的な一つの様式である。流行現象の結果としてできた集合体は、そこに存在する個人とは全く違った仕方で、思考し、感覚し、行動する。そこには個人の意識に関わらない、命令と強制の力がある。このように、流行現象は、マス・コミュニケーションによって出来た、社会的なものである。
本論文での試みは、「101回目のプロポ−ズ」と「東京ラブスト−リ−」という具体的なTVドラマを題材とした、マス・コミュニケ−ション過程の考察である。
第一章、第二章、第三章では、ドラマがいかにして流行現象と化していったのかという、現象の「原因」の問題を考察した。マス・メディアと流通の関わり、間接的な消費としての電波、直接消費としての音楽ソフトの商品化、メディア自体を巧みにマ−ケティングに組み込んでいった方法、そこに触れた視聴者への効果について、史実、経済、心理をふまえ論じ、消費社会・資本主義社会におけるメディアの構造を分析した。
一つの結論として、「Theme/Regular/Echo/Network/Distinction/Yourself」のキーワードを提示し、流行現象/メディア/個人の関係性を橋渡しする要因を考察した。
第4章では、ジャン・ボードリヤールの「シミュラークル」の概念と、虚構の現実化というマスコミの機能を批判的に検討し、メディアの権力性のついての議論に展開した。フィクションから距離感を助長するメディアの提示する非現実感は、受け手の成熟や理性的な人間像と結び付いて、公共的な許容範囲を常に提示するとされがちである。メディアの提示する許容された虚構性は非現実感を強く意識させるが、これにより、視聴者を強く日常的現実に押し戻す。虚構が意識させる現実的なものとしてのシミュラークルの生成である。メディアは価値・規範の強制や、枠組みのなかへの視聴者の組み入れはしないが、繰り返す現実への回帰へのきっかけを提示することにより、既存の価値.規範を画一化し規格化してゆく機械である。それは受け手の主体的とされる知の総体が作り出す集合意識の形態である。
第5章は、バルトの物語の構造分析方法/プロップの行為モデル/グレマスの行為項モデルに関する研究を検討し、記号論やロシアフォルマリズム、構造主義の方法論を適用して「101回目のプロポーズ」を構造分析したものである。
さらに構造化し、抽象化した内容を、各種社会調査や意識調査と比較することにより、現実と虚構の交錯と現実回帰現象の考察を行った。
第6章は、「東京ラブストーリー」の言説の分析を、精神分析的な読解を中心に行った。メディア的現実の登場人物の依拠する具体的な「場」を分析し、さらに言説にみる意識の依拠する「場」を分析し、視聴行為という「場」への展開を計って、内容分析からメディア論への橋渡しを行うとともに、メディアと視聴者の共同行為としての解釈過程を考察した。
終章では、「意味のファシズムから意味のポリゴニズムへ」というテーマで論を展開中であったが、時間ぎれのために結論をみなかった。今後の展開に続く。
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